終末 の フール。 終末のフール (集英社文庫)

【小説】終末のフール / 伊坂幸太郎

終末 の フール

終末のフールの主要登場人物 虎一(とらいち) 長男。 杉田家襲撃の主犯。 妹の暁子を執拗に追いかけ、挙句の果てに自殺に追い込んだマスコミを憎んでいる。 辰二(たつじ) 次男。 兄・虎一から杉田家襲撃の話を持ち掛けられ乗る。 暁子(あきこ) 空き巣に入られ、拳銃を所持した犯人の人質となる。 解放されたが、事件後マスコミから執拗に追いかけまわされ自殺する。 杉田玄白(すぎた げんぱく) 毒舌が売りのテレビアナウンサー。 暁子を連日ワイドショーのネタにする。 渡部(わたなべ) 杉田家と同じマンションに住む住人。 終末のフール の簡単なあらすじ 八年後に小惑星が衝突し、地球は滅亡すると予告されてから五年が過ぎました。 当初は絶望からパニックに陥った世界も、いまや平穏な小康状態にあります。 地球滅亡まであと三年と迫った頃、兄・虎一と弟の辰二は妹・暁子の無念を晴らすべく、元テレビアナウンサーの杉田家を襲撃します。 暁子は空き巣に立て籠られ、その後解放されましたが、容姿端麗で人目を惹く暁子は事件後もマスコミに執拗に追い回され衰弱、自殺をしてしまいます。 暁子の無念を果たすべく、兄弟は杉田の住む仙台北部のマンションを襲撃しますが、予想外な展開が待っていました。 当初は絶望からパニックに陥り、誰も彼もが車に荷物を詰め込んで、逃げ出そうとしていました。 渋滞で道は塞がり、クラクションや喧騒で大騒ぎ。 焦りと不安に取り乱した人々が暴徒と化して街中を暴れまわり酷い有様でした。 小惑星がぶつかる前にこの世は終わってしまうのではないかと思うほどでしたが、今年に入り、急にあの騒ぎが嘘だったように街は穏やかになっています。 警察による罰則が厳しくなったのも一因ですが、人々が諦め始めたことが大きい理由です。 恐怖に耐えきれない人は死んでしまったし、残された時間をいかに有効に過ごすかを考えた時、平和に暮らすのが賢い選択だと気づき始めたのです。 その日が近づけば、また人々は恐怖の怯え、パニックの渦に巻き込まれていくでしょうが、今はしばし小休止といったところ。 心穏やかに思い思いのまま毎日を送っていました。 仙台北部にあるヒルズタウンに残った住人たちも例に漏れず、平和に暮らしていました。 ヒルズタウン509号室 ヒルズタウン509号室は緊迫した空気が張り詰めていまいた。 拳銃を所持した男二人が杉田家を襲撃したのです。 一家の主は杉田玄白、年齢は四十五歳の元テレビアナウンサーです。 小惑星がぶるかる前は毒舌な喋りで茶の間を沸かした人気テレビマンでした。 現在のテレビはほとんど機能しなくなり、一握りの人間がニュースを伝える程度になっています。 杉田も小惑星がぶつかると知ってからは表舞台から姿を消し、現在は仙台北部のヒルズタウンに戻り娘一人と妻の家族三人で暮らしていました。 晩餐時だった為、食卓にはステーキ肉やスープ、グラスに注がれたビールが綺麗に並んでいます。 犯人の男二人は虎一と辰二の兄弟で、小惑星がぶるかる前に自分たちの手で杉田に報復しようとしていました。 きっかけは妹・暁子が一人暮らしをしていた部屋に空き巣に入られたことでした。 拳銃を所持していた犯人は暁子と鉢合わせし、そのまま部屋に立て籠ったのです。 三日後に暁子は解放されましたが、事件が解決した後もマスコミは暁子を追いかけました。 容姿端麗で人目を惹く暁子はマスコミの恰好の餌だったのです。 初めこそ丁寧に対応していた虎一も、執拗で陰湿、横暴で慇懃無礼なマスコミのやり方に疲弊していきます。 そのうちマスコミは暁子に非があったような報道をするようになっていきました。 連日ワイドショーは暁子を取り上げ、その中心にいたのは杉田でした。 虎一は表情がなくなり、それまでの虎一ではなくなってしまいました。 そして暁子は自殺をします。 杉田への復讐を決意した兄弟は、妹の無念を晴らすべく杉田家襲撃を決行したのです。 表情なく杉田に暁子のことを話す虎一。 そこに電話が鳴ります。 同じ階に住む渡部という老人からでした。 異様な雰囲気を感じ心配した渡部が電話を寄越したのです。 虎一は渡部に籠城しているからテレビ局に連絡しろと言い電話を切ります。 緊迫した雰囲気の中、妻と娘が食事を再開しようとします。 ふてぶてしい態度に激高する辰二。 そこに警察が駆け付け、玄関の外から呼びかけを始めます。 余命三年 小惑星がぶつかるとパニックになった人々を鎮圧する為、警察は武力行使するようになっていました。 虎一と辰二は間違いなくこのままでは射殺されます。 警察に突入される前に杉田に復讐しようと辰二は拳銃の引き金を引こうとします。 手が震え喉が渇き、食卓にあるビールを飲もうとしたその時、杉田の娘に突き飛ばされます。 激高する辰二に杉田は「食卓にあるものは毒が入っているから口にしてはいけない」と止めます。 杉田家は無理心中しようとしていたのです。 突然の告白に動揺する兄弟。 杉田は暁子の死に心を痛め、命日の今日、自殺をはかろうとしていたのです。 このまま警察が突入してくれば虎一と辰二は射殺されるか、刑務所行は免れません。 これ以上迷惑かけたくないと杉田一家は兄弟をこの場から脱出させようと試みます。 勝手な提案にはじめは難色を示していた兄弟でしたが、小惑星がぶつかるまでの残り三年、苦しみながら生きることが杉田への復讐だと考えを改め、杉田の脱出作戦に乗ることに決めます。 終末のフール を読んだ読書感想 八年後に小惑星が衝突し、地球は滅亡すると予告されてから五年が経ったという突飛な設定ですが、残された三年をどう暮らすが、どう生きていくか、希望を持って前を向く登場人物たちがまぶしいです。 仙台北部のヒルズタウンが舞台となり、話しが紡がれていきます。 今回ご紹介したのは『終末のフール』に収録されている『籠城のビール』という作品です。 被害者家族を追い詰めた杉田家は豪華な晩餐を楽しんでいて、なんて厚かましい家族なんだと呆れますが、実はそこがこの話のポイントです。 終わりが見えていて、絶望しかない世界のように思えますが、その中で必死にもがいて楽しさを追及する人の姿がそこにあります。

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伊坂幸太郎「終末のフール」感想 あまりにも穏やかな世界の終わり

終末 の フール

終末のフールの主要登場人物 虎一(とらいち) 長男。 杉田家襲撃の主犯。 妹の暁子を執拗に追いかけ、挙句の果てに自殺に追い込んだマスコミを憎んでいる。 辰二(たつじ) 次男。 兄・虎一から杉田家襲撃の話を持ち掛けられ乗る。 暁子(あきこ) 空き巣に入られ、拳銃を所持した犯人の人質となる。 解放されたが、事件後マスコミから執拗に追いかけまわされ自殺する。 杉田玄白(すぎた げんぱく) 毒舌が売りのテレビアナウンサー。 暁子を連日ワイドショーのネタにする。 渡部(わたなべ) 杉田家と同じマンションに住む住人。 終末のフール の簡単なあらすじ 八年後に小惑星が衝突し、地球は滅亡すると予告されてから五年が過ぎました。 当初は絶望からパニックに陥った世界も、いまや平穏な小康状態にあります。 地球滅亡まであと三年と迫った頃、兄・虎一と弟の辰二は妹・暁子の無念を晴らすべく、元テレビアナウンサーの杉田家を襲撃します。 暁子は空き巣に立て籠られ、その後解放されましたが、容姿端麗で人目を惹く暁子は事件後もマスコミに執拗に追い回され衰弱、自殺をしてしまいます。 暁子の無念を果たすべく、兄弟は杉田の住む仙台北部のマンションを襲撃しますが、予想外な展開が待っていました。 当初は絶望からパニックに陥り、誰も彼もが車に荷物を詰め込んで、逃げ出そうとしていました。 渋滞で道は塞がり、クラクションや喧騒で大騒ぎ。 焦りと不安に取り乱した人々が暴徒と化して街中を暴れまわり酷い有様でした。 小惑星がぶつかる前にこの世は終わってしまうのではないかと思うほどでしたが、今年に入り、急にあの騒ぎが嘘だったように街は穏やかになっています。 警察による罰則が厳しくなったのも一因ですが、人々が諦め始めたことが大きい理由です。 恐怖に耐えきれない人は死んでしまったし、残された時間をいかに有効に過ごすかを考えた時、平和に暮らすのが賢い選択だと気づき始めたのです。 その日が近づけば、また人々は恐怖の怯え、パニックの渦に巻き込まれていくでしょうが、今はしばし小休止といったところ。 心穏やかに思い思いのまま毎日を送っていました。 仙台北部にあるヒルズタウンに残った住人たちも例に漏れず、平和に暮らしていました。 ヒルズタウン509号室 ヒルズタウン509号室は緊迫した空気が張り詰めていまいた。 拳銃を所持した男二人が杉田家を襲撃したのです。 一家の主は杉田玄白、年齢は四十五歳の元テレビアナウンサーです。 小惑星がぶるかる前は毒舌な喋りで茶の間を沸かした人気テレビマンでした。 現在のテレビはほとんど機能しなくなり、一握りの人間がニュースを伝える程度になっています。 杉田も小惑星がぶつかると知ってからは表舞台から姿を消し、現在は仙台北部のヒルズタウンに戻り娘一人と妻の家族三人で暮らしていました。 晩餐時だった為、食卓にはステーキ肉やスープ、グラスに注がれたビールが綺麗に並んでいます。 犯人の男二人は虎一と辰二の兄弟で、小惑星がぶるかる前に自分たちの手で杉田に報復しようとしていました。 きっかけは妹・暁子が一人暮らしをしていた部屋に空き巣に入られたことでした。 拳銃を所持していた犯人は暁子と鉢合わせし、そのまま部屋に立て籠ったのです。 三日後に暁子は解放されましたが、事件が解決した後もマスコミは暁子を追いかけました。 容姿端麗で人目を惹く暁子はマスコミの恰好の餌だったのです。 初めこそ丁寧に対応していた虎一も、執拗で陰湿、横暴で慇懃無礼なマスコミのやり方に疲弊していきます。 そのうちマスコミは暁子に非があったような報道をするようになっていきました。 連日ワイドショーは暁子を取り上げ、その中心にいたのは杉田でした。 虎一は表情がなくなり、それまでの虎一ではなくなってしまいました。 そして暁子は自殺をします。 杉田への復讐を決意した兄弟は、妹の無念を晴らすべく杉田家襲撃を決行したのです。 表情なく杉田に暁子のことを話す虎一。 そこに電話が鳴ります。 同じ階に住む渡部という老人からでした。 異様な雰囲気を感じ心配した渡部が電話を寄越したのです。 虎一は渡部に籠城しているからテレビ局に連絡しろと言い電話を切ります。 緊迫した雰囲気の中、妻と娘が食事を再開しようとします。 ふてぶてしい態度に激高する辰二。 そこに警察が駆け付け、玄関の外から呼びかけを始めます。 余命三年 小惑星がぶつかるとパニックになった人々を鎮圧する為、警察は武力行使するようになっていました。 虎一と辰二は間違いなくこのままでは射殺されます。 警察に突入される前に杉田に復讐しようと辰二は拳銃の引き金を引こうとします。 手が震え喉が渇き、食卓にあるビールを飲もうとしたその時、杉田の娘に突き飛ばされます。 激高する辰二に杉田は「食卓にあるものは毒が入っているから口にしてはいけない」と止めます。 杉田家は無理心中しようとしていたのです。 突然の告白に動揺する兄弟。 杉田は暁子の死に心を痛め、命日の今日、自殺をはかろうとしていたのです。 このまま警察が突入してくれば虎一と辰二は射殺されるか、刑務所行は免れません。 これ以上迷惑かけたくないと杉田一家は兄弟をこの場から脱出させようと試みます。 勝手な提案にはじめは難色を示していた兄弟でしたが、小惑星がぶつかるまでの残り三年、苦しみながら生きることが杉田への復讐だと考えを改め、杉田の脱出作戦に乗ることに決めます。 終末のフール を読んだ読書感想 八年後に小惑星が衝突し、地球は滅亡すると予告されてから五年が経ったという突飛な設定ですが、残された三年をどう暮らすが、どう生きていくか、希望を持って前を向く登場人物たちがまぶしいです。 仙台北部のヒルズタウンが舞台となり、話しが紡がれていきます。 今回ご紹介したのは『終末のフール』に収録されている『籠城のビール』という作品です。 被害者家族を追い詰めた杉田家は豪華な晩餐を楽しんでいて、なんて厚かましい家族なんだと呆れますが、実はそこがこの話のポイントです。 終わりが見えていて、絶望しかない世界のように思えますが、その中で必死にもがいて楽しさを追及する人の姿がそこにあります。

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楽天ブックス: 終末のフール

終末 の フール

そんな報道が世界中に流れた。 最初は半信半疑だった人々も、次第にその事実を受け入れ、結果として世界はパニックとなった。 本作品の舞台は、そんなパニックも小康状態となった、報道から5年つまり世界の滅亡まで後三年の世界である。 以下、物語の方向性について触れます。 ネタバレに厳しい方は読まないほうが良いかも。 では物語はどういう方向に進むのか。 何とかして助かる道を模索した人類は、襲い来る小惑星を破壊すべく、決死の隊員たちを組織し、宇宙船で小惑星に向かい、爆弾を仕掛ける。 なんて展開には全くならない。 基本的には世界は滅亡前提である。 するとどうなるかというと、最初のご年間はともかく、落ち着いた状態の描写はパニック映画のそれではなく、不治の病を扱った映画のそれになっているのだ。 人々は余名3年という事実を突きつけられたまま生きている。 これは癌の宣告を受けた状態に近い。 全ての人間に余命が明確につきつけられた時に、人はどの様に生きるのかってのが、本作品の楽しみ方となる。 一見すると酷い設定の物語のようにも思えるが、ちょっと待って欲しい。 人は凡そ80年。 長い人でも精々100年程度で死ぬ。 長そうに思えるが、地球の歴史から観たらまぁ、ゴミみたいに一瞬で死ぬ運命なのだ。 にも関わらず、多くの人間はその事実を忘れている。 或いは知りながらも、目を背けながら生きている。 その事実を直視しながら、まっすぐに生きている人というのは意外に少ないのだ。 そういった観点でこの作品を読むと、パニック映画的アプローチとはまた意味が違ってくるはずである。 ゆるくつながった短篇集の形となっているため、以下それぞれについて簡単に解説。 【終末のフール】 家族の問題を描いた作品。 ちょっと印象が薄かった。 まぁ、世界設定の説明用だという認識。 【太陽のシール】 ずっと子供が出来なかった夫婦の間に、今頃になって妊娠が発覚した。 当然、あと3年で世界が滅亡するのに産むべきなのかと二人は悩むこととなる。 自らの死ではなく子供が生きられない世の中という切り口は、他の物語とは毛色が異なり、2作目にして一番インパクトは強かった。 ネタバレ1 長く生きられない病気を抱えた子供を持った夫婦が、「とても幸せだ」と発現するシーンがいろんな意味で衝撃的だった。 また、隕石は落ちてこないかもしれないしという、楽観的な発言の素晴らしさにも感心した。 よくよく考えたら、子供を産んだって大体100年以内に死んでしまうのである。 だから無意味だ、と貴方は考えるだろうか。 【籠城のビール】 報道のせいで身内を失った男が、元報道マンの家に復讐に向かう話。 しかし彼はとんでもない肩透かしを食らうことになる。 「精一杯生きることは権利ではなく義務」って趣旨のセリフは凄いなと感じた。 【冬眠のガール】 残された時間を死んだ父の書斎の本を読みつくすことに使う少女の物語。 誰かと本を共有することは、人生の一部を共有することでもある。 しかし、それだけでは駄目なのだ。 【鋼鉄のウール】 キックボクシングのジムの話。 「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか」というセリフにこの本全部の答えが集約されているように思う。 明日癌の宣告を受けても、今までと同じ生活を続けたいと思えるような人生を歩んでいたら、それが本当の幸せだと思う。 ジョブズのセリフの逆アプローチとも言える。 【天体のヨール】 落下してくる小惑星に、天体ファンが大興奮というちょっと意外な切り口の話。 「みんなが真に受けたから落ちることになったんじゃないの?」ってセリフは秀逸。 そのうちどっかに公表するつもりで僕が書いた数ページの作品でも同じ切り口を使っているけど、死ぬか死なないかで死ぬに賭ける意味は無い。 当たっても当たったと認識できないからだ。 【演劇のオール】 演劇を目指していた少女が、演じる事で人々をを助ける話。 どこかで読んだことのある展開だけど結構好きかも。

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