ぜん ね ず pixiv。 #ぜんねず #竈門禰豆子 また出逢う

#ぜんねず #竈門禰豆子 妹の縁談

ぜん ね ず pixiv

pixivFACTORY事務局です。 2020年5月29日 金 より、「夏はもうすぐ!!ハッピーサマーTシャツまつり」を開催します。 【開催期間】 2020年5月29日 金 ~6月14日 日 23:59まで 【参加方法】 1. pixivFACTORYで のいずれかを選ぶ。 Tシャツにしたいイラストをアップロードする。 グッズのデザインシミュレーションを確認して保存。 キャンペーン用シェアボタンを押してTwitterにツイートすれば応募完了です。 より、応募したい「白Tシャツ」「カラーTシャツ」「フルグラフィックTシャツ」のいずれかを選ぶ。 詳細ページにあるキャンペーン用シェアボタンを押してTwitterにシェアすれば応募完了です。 【受賞賞品】 抽選で30名様に、ご応募いただいたTシャツデザインを実際に製造し、無料でお届けいたします。 さらに、当選者のうち数名の方は、Tシャツデザインを3D化し、後日「VRoidモバイル」期間限定ワールド内にて展示いたします。 つくったキャラを使ってAR撮影をしたり、バーチャル空間内に友達と集まって撮影を楽しむことができます。 ご連絡後、一定期間内にお返事をいただけなかった場合には景品の授与が行えないことがございますので、あらかじめご了承ください。 二次創作作品や年齢制限のある作品は受賞対象外となります。 皆さまからのご応募をお待ちしております。

次の

ぜんいつー

ぜん ね ず pixiv

「ごちそうさまでした」 空になった膳の前で炭治郎は手を合わせる。 妹の禰豆子が食後のお茶を差し出した。 湯呑からほのかに立ち上る湯気が決意を促しているように思える。 炭治郎はぎこちない笑顔を妹へ向けて茶托ごと受け取った。 禰豆子が人間に戻って以来、炭治郎は蝶屋敷の近くに小さな家を借りて兄妹二人で暮らしている。 鬼殺隊として日々の任務をこなす身では家を空けることも多い為、頼れる人間が近くに居る場所を選んだ。 以前のように戦う力を失った禰豆子は、蝶屋敷へ通って看護の手伝いをして日々を過ごしている。 脚を骨折した患者がやっと歩けるようになったこと、機能回復訓練を手伝ったことなど、楽しげな日常の話を聞きながら、炭治郎は禰豆子と一緒の生活をあとどれくらい続けられるのだろうかと、ほんの少し寂しく思う。 「禰豆子、心に決めた人は居るのか?」 思い詰めてようやく口にした炭治郎の質問に、禰豆子は口に含んでいたお茶を喉に詰まらせた。 唇をきつく結び零さないよう必死に堪え、ふっと鼻から息を逃がしてなんとか無事飲み込んだ。 「なぁに?突然」 震える手で湯呑を茶托へ戻す禰豆子の目が左右へと揺れている。 きっとあの目の奥には騒がしい金色が踊るように過っているはずだ。 言葉にして確認したことは無いが、禰豆子は善逸を好いているのだと炭治郎は察していた。 その根拠は善逸が家に顔を出した時の禰豆子の瞳の輝きだったり、二人が並んで話をしている時の距離だったり、善逸と共同任務の際に渡された二人分のおにぎりの小さくて丁寧な三角形だったりする。 一方の善逸は禰豆子をどう思っているのかというと、それはもう言葉を尽くし態度も明らかに、全身で「禰豆子ちゃんが大好きです!」と叫び狂っている。 挙句半月ほど前に、本人の口から決定的な言葉が出た。 許してくれるか? 今まで散々禰豆子本人へ向かって結婚しようと喚き散らしていたのに、何を今更と呆れる一方で、善逸にも漸く家族である炭治郎に許可を乞うという分別を覚えたのかと微笑ましく思えた。 禰豆子の気持ちを知ってから決めていた言葉を返してやると、善逸の緊張で白くなった顔にみるみる赤みがさしていった。 口角がぎゅんと上がった弾みで目元に溜まっていた涙が一粒零れた。 ありがとうお義兄様、と叫ばれて気が早いなと笑った。 同時に、そうか両親を失った後でも弟を持つことがあるのかと不可思議な感動を覚えた。 それからしばらくして禰豆子は浮かない顔をするようになった。 溜息が多くなり、ぼんやりと虚空を見つめていたかと思えば座り込んで下を向いている。 二人から結婚の話が来る時を今日か明日かと落ち着き無く待っていた炭治郎としては、拍子抜けするような禰豆子の態度だった。 善逸を捕まえて話を聞こうとするも、任務やら何やらで会う機会が無かった。 避けられていたのかもしれない。 炭治郎が二人の結婚を許す大前提は禰豆子の気持ちであり、そこが覆されるなら話は変わってくる。 炭治郎は立ち上がり、箪笥の中から慎重な手つきで文箱を取り出した。 黒漆を塗り重ねて螺鈿細工の施された豪奢な箱を抱えて元居た場所へ座る。 「禰豆子、この箱には身上書と写真が入ってる。 お前に見合い話が来たんだ。 間に然るべき人を立てた、正式な話だよ」 禰豆子は文箱をじっと見つめた。 まるで箱の中から鬼が飛び出してくるのではないかと怯えているような顔だった。 ひょっとしたらその鬼は過去の彼女自身なのかもしれない。 「どんな人なの?」 「禰豆子を大切にしてくれる人だと思う。 でも、幸せにしてくれる人かどうかは兄ちゃんには分からない」 「こんなに綺麗な箱を用意する位だから、きっと立派な人なんだと思うの。 身に余るお話よね」 禰豆子は不安そうな顔で胸に手を当て炭治郎を見つめた。 「お断りしたらお兄ちゃんの立場も悪くなるのかしら」 「これは禰豆子の話なんだから、兄ちゃんのことは何も気にしなくていいんだ。 俺は禰豆子の気持ちを分かりたい。 だから話してくれないか?……お前の幸せのために」 炭治郎が言外に含ませた存在を禰豆子はきっと汲んだのだろう。 胸に当てていた手を膝の上に落として指先が白くなるほどぎゅっと握った。 「……善逸さんに、結婚を申し込まれたの」 「そうか」 「私、その時は気が立っていて、またいつもの冗談ですか、って答えてしまった」 これまでの禰豆子は善逸の日々繰り返される告白に返事をしていなかった。 鬼だった頃は何を言っているのか分かっていなかった様子で、人間に戻った後も当時の反応に少し色が付いた程度だった。 笑って聞き流したり、恥ずかしそうにほんのりと笑顔を向けてみたりと、はっきりとしないながらもまんざらでもないような態度だと炭治郎は思っていた。 好きだ、結婚しようと散々繰り返してきた言葉は最早本来の意味を失って、挨拶のような物になっていたのだろう。 「善逸さんは本気だったのに。 あんなに優しい人を傷付けた」 後になって気が付いた禰豆子は謝ろうと思ったが、彼女もまた善逸と話をする機会を作ることが出来無かった。 では手紙を書こうと筆を執ったまでは良かったが、何を伝えればいいのか思案に暮れてしまう。 相手の誠意を踏みにじってしまった罪悪感と会えない時間が禰豆子を臆病にしていく。 「……悪いことばかり考えてしまうの。 善逸さんが好きになってくれたのは鬼だった頃の子供みたいな私で、生意気な口をきく私は嫌われてしまったんじゃないかしら」 「今更な話だろう?人間に戻ってから時間も経っているし、今の禰豆子が嫌いだったら、そもそも結婚の話は来ない」 禰豆子は申し訳無さそうに目を伏せた。 「随分前に聞いた、善逸さんが女の人と見ればすぐに飛びついていた頃の話とかを思い出してしまう」 チュン太郎の嘆きや鬼殺隊士の冷やかしで断片的に耳にしてしまった善逸の過去の所業の数々も、今の当人を見つめている禰豆子にはどうでもいいことだったはずだ。 過去と割り切った話をまた拾い上げて傷を探してしまうほど、心が揺れている。 恋というものは禰豆子のように芯の強い娘の心にもか弱い向日葵を咲かせてしまうものらしい。 「剣士になった理由もね、知ってるの。 善逸さんは借金を作ってもいいくらい、あの女の人に対する想いが深かったのよ」 「考えが浅かったんじゃないか?ただ単に」 思ったままの言葉が暴言となって出てしまい、禰豆子に悲しそうな顔をされた。 いくら関係が拗れているとはいえ好いた男のことを悪く言われたくは無かっただろう。 「俺も詳しく聞いたわけでは無いけれど、昔の話、というかむしろ子供の頃の話だろうから」 初めての共同任務の時でさえ、互いに少年と言って差し支えない年だった。 善逸が女に騙された一件はさらに前、剣士として修業を受ける切っ掛けの時分だ。 きっともっと幼かったはずだ。 親のいない善逸でも家族を作れる方法として、結婚という手段を教えた人間が誰かは知らない。 ひょっとしたら自分で気が付いたのかもしれない。 それでも、無知で幼かった善逸を騙す術が色恋では無く家族を切望する祈りであったならと気付いて、やりきれない悲しみを感じた。 炭治郎は汚泥の中に投げ捨てられた小さな白い布を見送るような気持ちになる。 「言われてみればそうだな。 確かに想いは深かったのかもしれない。 あいつは女の子となれば見境なく手を握るような男で、だから相手から叩かれて逃げられた。 でも、手を握り返してくれた女の子には自分の全てを投げ渡してしまう」 禰豆子は炭治郎の言葉と彼女の中に居る善逸の姿との答え合せをするような真剣な目をしていた。 自分達兄妹には当たり前のように注がれていた肉親からの無償の愛情。 それを知らない善逸の情の返し方は大仰で一途で加減が出来無い。 禰豆子からしてみれば放って置けない危うさがあるのだろう。 「禰豆子が逃げなければ、善逸はずっとお前一人の手を握っている。 ……全ては禰豆子次第だ」 禰豆子は上を向いて大きく息を吸った。 涙が溢れそうになって堪えているのだろう。 炭治郎は気が付かないふりをして残ったお茶をゆっくりと飲み干した。 時計の規則的な音だけが静かな部屋に響いている。 「お兄ちゃん」 「うん」 とっくに空になっていた湯呑を茶托へ戻して炭治郎は妹を見つめた。 居住まいを正し真っ直ぐに兄を見つめる瞳は母に似ていた。 やはり禰豆子は美人だと炭治郎は目を細める。 「私、善逸さんをお慕いしています」 「じゃあ、見合い話を進めないとな!」 禰豆子は唖然として身動ぎもしないまま炭治郎の顔を凝視していた。 「どうした禰豆子?」 首を傾げる炭治郎と同じ角度で禰豆子もまた首を傾げた。 「進めるの?」 「うん?」 「私は善逸さんのことが好きなのに、お兄ちゃんは他の人と結婚しろって言っちゃうの?」 そういう意味か、と炭治郎は手を打って文箱を禰豆子へ見せるように抱えた。 「この箱に入ってる身上書と写真、善逸のなんだ」 「……え?」 傾いた首を戻すことも忘れて禰豆子は呆然としている。 炭治郎としても何故善逸が今になって回りくどい方法で結婚を申し込んできたのか疑問だったが、禰豆子の話を聞いて合点がいった。 本気の告白を冗談だと思われてしまった善逸は、どうすれば信じて貰えるのかと悩んだのだろう。 自分の言葉に信用が無いならば、第三者を間に立てるべきだという結論に至ったのは想像に難くない。 禰豆子の頬にじわじわと赤みが差してくる。 きゅっと眉が上がったのでこれは良くないな、と察した頃には禰豆子が立ち上がっていた。 「びっくりさせないでよ!お兄ちゃんに反対されたら私どうしたらいいのか分からないよ」 禰豆子は両拳を上下に振って、昔から炭治郎は言葉が足りなくて難儀していたのだと訴えてきた。 曰く、炭治郎が弟妹に何かを教えた後は決まって「それで兄ちゃんは何が言いたかったの?」と禰豆子へ解説を求めて来た。 禰豆子もまた炭治郎の言っている意味を理解出来ないまま、四苦八苦しながら弟妹の疑問に答えていたのだ。 「お兄ちゃんの擬態語だらけの言葉、翻訳するの本当に大変なんだから!」 炭治郎は言葉の刃物に貫かれて仰向けに倒れた。 妹にそんな労苦を強いていたなど今まで気付きもしなかった。 不甲斐ない兄ですまない、と文箱を胸にぎゅっと抱きしめて、その螺鈿の手触りで炭治郎は消沈から正気へ返る。 上体を起して文箱を頭上へ捧げ持った。 「そうだ禰豆子!この箱は大切な物なんだ!」 「それはそうだよ。 立派な箱だし、善逸さんの身上書と写真……」 禰豆子は赤らんだ頬に手を当てて、写真見たいなと呟いた。 「中身はどうでもいいんだ。 善逸だから」 「酷い!」 「問題は箱の方なんだ!この箱を用意して下さった人、つまりお前たちの仲人さんはお館様だ!」 禰豆子は赤くなっていた頬を一気に青褪めさせて身を竦ませた。 炭治郎は無言で頷く。 頭上の箱ががたがた鳴る。 今になって恐れ多さが八割腕にきている。 屋敷へ呼び出されてお館様から直々に話を受けた時は冷や汗を流すばかりの炭治郎だったが、主は楽しそうに目元を綻ばせていたのが救いだった。 鬼殺隊にとって神に等しいお方に私事を頼むなどと、凄まじい身の程知らずをしでかしてくれたと恨みたかった。 しかし善逸からしてみれば、彼の知るもっとも信頼の厚い人物と言えば彼の御仁だったのだろう。 多忙なお館様の手を煩わせるなと柱達から相応のきついお叱りを受ける可能性もあっただろうに、それだけ禰豆子に対して本気なのだと思うと炭治郎には何も言えなかった。 傍迷惑な話だが、禰豆子の兄、そして善逸の将来の義兄として巻き込まれてやろうと腹を括った。 これも長男の務めだ。 「とんでもない善逸さんだよ!」 悲鳴を上げる禰豆子を見上げながら、炭治郎は結婚した妹が善逸に似てきたら嫌だな、と密かに思った。

次の

ものづくりがもっと楽しくなるアイテム制作サービス

ぜん ね ず pixiv

「ごちそうさまでした」 空になった膳の前で炭治郎は手を合わせる。 妹の禰豆子が食後のお茶を差し出した。 湯呑からほのかに立ち上る湯気が決意を促しているように思える。 炭治郎はぎこちない笑顔を妹へ向けて茶托ごと受け取った。 禰豆子が人間に戻って以来、炭治郎は蝶屋敷の近くに小さな家を借りて兄妹二人で暮らしている。 鬼殺隊として日々の任務をこなす身では家を空けることも多い為、頼れる人間が近くに居る場所を選んだ。 以前のように戦う力を失った禰豆子は、蝶屋敷へ通って看護の手伝いをして日々を過ごしている。 脚を骨折した患者がやっと歩けるようになったこと、機能回復訓練を手伝ったことなど、楽しげな日常の話を聞きながら、炭治郎は禰豆子と一緒の生活をあとどれくらい続けられるのだろうかと、ほんの少し寂しく思う。 「禰豆子、心に決めた人は居るのか?」 思い詰めてようやく口にした炭治郎の質問に、禰豆子は口に含んでいたお茶を喉に詰まらせた。 唇をきつく結び零さないよう必死に堪え、ふっと鼻から息を逃がしてなんとか無事飲み込んだ。 「なぁに?突然」 震える手で湯呑を茶托へ戻す禰豆子の目が左右へと揺れている。 きっとあの目の奥には騒がしい金色が踊るように過っているはずだ。 言葉にして確認したことは無いが、禰豆子は善逸を好いているのだと炭治郎は察していた。 その根拠は善逸が家に顔を出した時の禰豆子の瞳の輝きだったり、二人が並んで話をしている時の距離だったり、善逸と共同任務の際に渡された二人分のおにぎりの小さくて丁寧な三角形だったりする。 一方の善逸は禰豆子をどう思っているのかというと、それはもう言葉を尽くし態度も明らかに、全身で「禰豆子ちゃんが大好きです!」と叫び狂っている。 挙句半月ほど前に、本人の口から決定的な言葉が出た。 許してくれるか? 今まで散々禰豆子本人へ向かって結婚しようと喚き散らしていたのに、何を今更と呆れる一方で、善逸にも漸く家族である炭治郎に許可を乞うという分別を覚えたのかと微笑ましく思えた。 禰豆子の気持ちを知ってから決めていた言葉を返してやると、善逸の緊張で白くなった顔にみるみる赤みがさしていった。 口角がぎゅんと上がった弾みで目元に溜まっていた涙が一粒零れた。 ありがとうお義兄様、と叫ばれて気が早いなと笑った。 同時に、そうか両親を失った後でも弟を持つことがあるのかと不可思議な感動を覚えた。 それからしばらくして禰豆子は浮かない顔をするようになった。 溜息が多くなり、ぼんやりと虚空を見つめていたかと思えば座り込んで下を向いている。 二人から結婚の話が来る時を今日か明日かと落ち着き無く待っていた炭治郎としては、拍子抜けするような禰豆子の態度だった。 善逸を捕まえて話を聞こうとするも、任務やら何やらで会う機会が無かった。 避けられていたのかもしれない。 炭治郎が二人の結婚を許す大前提は禰豆子の気持ちであり、そこが覆されるなら話は変わってくる。 炭治郎は立ち上がり、箪笥の中から慎重な手つきで文箱を取り出した。 黒漆を塗り重ねて螺鈿細工の施された豪奢な箱を抱えて元居た場所へ座る。 「禰豆子、この箱には身上書と写真が入ってる。 お前に見合い話が来たんだ。 間に然るべき人を立てた、正式な話だよ」 禰豆子は文箱をじっと見つめた。 まるで箱の中から鬼が飛び出してくるのではないかと怯えているような顔だった。 ひょっとしたらその鬼は過去の彼女自身なのかもしれない。 「どんな人なの?」 「禰豆子を大切にしてくれる人だと思う。 でも、幸せにしてくれる人かどうかは兄ちゃんには分からない」 「こんなに綺麗な箱を用意する位だから、きっと立派な人なんだと思うの。 身に余るお話よね」 禰豆子は不安そうな顔で胸に手を当て炭治郎を見つめた。 「お断りしたらお兄ちゃんの立場も悪くなるのかしら」 「これは禰豆子の話なんだから、兄ちゃんのことは何も気にしなくていいんだ。 俺は禰豆子の気持ちを分かりたい。 だから話してくれないか?……お前の幸せのために」 炭治郎が言外に含ませた存在を禰豆子はきっと汲んだのだろう。 胸に当てていた手を膝の上に落として指先が白くなるほどぎゅっと握った。 「……善逸さんに、結婚を申し込まれたの」 「そうか」 「私、その時は気が立っていて、またいつもの冗談ですか、って答えてしまった」 これまでの禰豆子は善逸の日々繰り返される告白に返事をしていなかった。 鬼だった頃は何を言っているのか分かっていなかった様子で、人間に戻った後も当時の反応に少し色が付いた程度だった。 笑って聞き流したり、恥ずかしそうにほんのりと笑顔を向けてみたりと、はっきりとしないながらもまんざらでもないような態度だと炭治郎は思っていた。 好きだ、結婚しようと散々繰り返してきた言葉は最早本来の意味を失って、挨拶のような物になっていたのだろう。 「善逸さんは本気だったのに。 あんなに優しい人を傷付けた」 後になって気が付いた禰豆子は謝ろうと思ったが、彼女もまた善逸と話をする機会を作ることが出来無かった。 では手紙を書こうと筆を執ったまでは良かったが、何を伝えればいいのか思案に暮れてしまう。 相手の誠意を踏みにじってしまった罪悪感と会えない時間が禰豆子を臆病にしていく。 「……悪いことばかり考えてしまうの。 善逸さんが好きになってくれたのは鬼だった頃の子供みたいな私で、生意気な口をきく私は嫌われてしまったんじゃないかしら」 「今更な話だろう?人間に戻ってから時間も経っているし、今の禰豆子が嫌いだったら、そもそも結婚の話は来ない」 禰豆子は申し訳無さそうに目を伏せた。 「随分前に聞いた、善逸さんが女の人と見ればすぐに飛びついていた頃の話とかを思い出してしまう」 チュン太郎の嘆きや鬼殺隊士の冷やかしで断片的に耳にしてしまった善逸の過去の所業の数々も、今の当人を見つめている禰豆子にはどうでもいいことだったはずだ。 過去と割り切った話をまた拾い上げて傷を探してしまうほど、心が揺れている。 恋というものは禰豆子のように芯の強い娘の心にもか弱い向日葵を咲かせてしまうものらしい。 「剣士になった理由もね、知ってるの。 善逸さんは借金を作ってもいいくらい、あの女の人に対する想いが深かったのよ」 「考えが浅かったんじゃないか?ただ単に」 思ったままの言葉が暴言となって出てしまい、禰豆子に悲しそうな顔をされた。 いくら関係が拗れているとはいえ好いた男のことを悪く言われたくは無かっただろう。 「俺も詳しく聞いたわけでは無いけれど、昔の話、というかむしろ子供の頃の話だろうから」 初めての共同任務の時でさえ、互いに少年と言って差し支えない年だった。 善逸が女に騙された一件はさらに前、剣士として修業を受ける切っ掛けの時分だ。 きっともっと幼かったはずだ。 親のいない善逸でも家族を作れる方法として、結婚という手段を教えた人間が誰かは知らない。 ひょっとしたら自分で気が付いたのかもしれない。 それでも、無知で幼かった善逸を騙す術が色恋では無く家族を切望する祈りであったならと気付いて、やりきれない悲しみを感じた。 炭治郎は汚泥の中に投げ捨てられた小さな白い布を見送るような気持ちになる。 「言われてみればそうだな。 確かに想いは深かったのかもしれない。 あいつは女の子となれば見境なく手を握るような男で、だから相手から叩かれて逃げられた。 でも、手を握り返してくれた女の子には自分の全てを投げ渡してしまう」 禰豆子は炭治郎の言葉と彼女の中に居る善逸の姿との答え合せをするような真剣な目をしていた。 自分達兄妹には当たり前のように注がれていた肉親からの無償の愛情。 それを知らない善逸の情の返し方は大仰で一途で加減が出来無い。 禰豆子からしてみれば放って置けない危うさがあるのだろう。 「禰豆子が逃げなければ、善逸はずっとお前一人の手を握っている。 ……全ては禰豆子次第だ」 禰豆子は上を向いて大きく息を吸った。 涙が溢れそうになって堪えているのだろう。 炭治郎は気が付かないふりをして残ったお茶をゆっくりと飲み干した。 時計の規則的な音だけが静かな部屋に響いている。 「お兄ちゃん」 「うん」 とっくに空になっていた湯呑を茶托へ戻して炭治郎は妹を見つめた。 居住まいを正し真っ直ぐに兄を見つめる瞳は母に似ていた。 やはり禰豆子は美人だと炭治郎は目を細める。 「私、善逸さんをお慕いしています」 「じゃあ、見合い話を進めないとな!」 禰豆子は唖然として身動ぎもしないまま炭治郎の顔を凝視していた。 「どうした禰豆子?」 首を傾げる炭治郎と同じ角度で禰豆子もまた首を傾げた。 「進めるの?」 「うん?」 「私は善逸さんのことが好きなのに、お兄ちゃんは他の人と結婚しろって言っちゃうの?」 そういう意味か、と炭治郎は手を打って文箱を禰豆子へ見せるように抱えた。 「この箱に入ってる身上書と写真、善逸のなんだ」 「……え?」 傾いた首を戻すことも忘れて禰豆子は呆然としている。 炭治郎としても何故善逸が今になって回りくどい方法で結婚を申し込んできたのか疑問だったが、禰豆子の話を聞いて合点がいった。 本気の告白を冗談だと思われてしまった善逸は、どうすれば信じて貰えるのかと悩んだのだろう。 自分の言葉に信用が無いならば、第三者を間に立てるべきだという結論に至ったのは想像に難くない。 禰豆子の頬にじわじわと赤みが差してくる。 きゅっと眉が上がったのでこれは良くないな、と察した頃には禰豆子が立ち上がっていた。 「びっくりさせないでよ!お兄ちゃんに反対されたら私どうしたらいいのか分からないよ」 禰豆子は両拳を上下に振って、昔から炭治郎は言葉が足りなくて難儀していたのだと訴えてきた。 曰く、炭治郎が弟妹に何かを教えた後は決まって「それで兄ちゃんは何が言いたかったの?」と禰豆子へ解説を求めて来た。 禰豆子もまた炭治郎の言っている意味を理解出来ないまま、四苦八苦しながら弟妹の疑問に答えていたのだ。 「お兄ちゃんの擬態語だらけの言葉、翻訳するの本当に大変なんだから!」 炭治郎は言葉の刃物に貫かれて仰向けに倒れた。 妹にそんな労苦を強いていたなど今まで気付きもしなかった。 不甲斐ない兄ですまない、と文箱を胸にぎゅっと抱きしめて、その螺鈿の手触りで炭治郎は消沈から正気へ返る。 上体を起して文箱を頭上へ捧げ持った。 「そうだ禰豆子!この箱は大切な物なんだ!」 「それはそうだよ。 立派な箱だし、善逸さんの身上書と写真……」 禰豆子は赤らんだ頬に手を当てて、写真見たいなと呟いた。 「中身はどうでもいいんだ。 善逸だから」 「酷い!」 「問題は箱の方なんだ!この箱を用意して下さった人、つまりお前たちの仲人さんはお館様だ!」 禰豆子は赤くなっていた頬を一気に青褪めさせて身を竦ませた。 炭治郎は無言で頷く。 頭上の箱ががたがた鳴る。 今になって恐れ多さが八割腕にきている。 屋敷へ呼び出されてお館様から直々に話を受けた時は冷や汗を流すばかりの炭治郎だったが、主は楽しそうに目元を綻ばせていたのが救いだった。 鬼殺隊にとって神に等しいお方に私事を頼むなどと、凄まじい身の程知らずをしでかしてくれたと恨みたかった。 しかし善逸からしてみれば、彼の知るもっとも信頼の厚い人物と言えば彼の御仁だったのだろう。 多忙なお館様の手を煩わせるなと柱達から相応のきついお叱りを受ける可能性もあっただろうに、それだけ禰豆子に対して本気なのだと思うと炭治郎には何も言えなかった。 傍迷惑な話だが、禰豆子の兄、そして善逸の将来の義兄として巻き込まれてやろうと腹を括った。 これも長男の務めだ。 「とんでもない善逸さんだよ!」 悲鳴を上げる禰豆子を見上げながら、炭治郎は結婚した妹が善逸に似てきたら嫌だな、と密かに思った。

次の